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HOME  > 校友発掘キャラバン > No.15 江藤 孝治 [映像作家・ドキュメンタリー映画監督]

[msb! caravan]

No.15 江藤 孝治 [映像作家・ドキュメンタリー映画監督]

江藤孝治(えとう・たかはる)
映像作家・ドキュメンタリー映画監督
(2009年度 武蔵野美術大学大学院視覚伝達デザインコース修了)

1985年、福岡県生まれ。
大学在学中、探検家・関野吉晴氏に師事し、
同氏の探検プロジェクトに帯同しながらカメラを回したドキュメンタリー映画
『僕らのカヌーができるまで』(芸術文化振興基金助成作品/武蔵野美術大学卒業制作展優秀賞)を制作。
大学院修了後、映像制作会社「グループ現代」に所属し、
NHKのドキュメンタリー番組や、企業PR映像制作などを手がける。
2014年、若手現代美術家の加藤翼を追ったドキュメンタリー『ミタケオヤシン』が公開された。
2016年10月より、映像制作会社「ネツゲン」に所属。

【代表作】
◎『僕らのカヌーができるまで』 2009年公開/109分
総合演出:江藤孝治
監督:江藤孝治、水本博之、木下美月、鈴木純一
出演:関野吉晴(探検家・武蔵野美術大学教授)、武蔵野美術大学学生・卒業生ほか
https://www.mmjp.or.jp/pole2/bokurano-canoe-gadekirumade.html
◎『ミタケオヤシン』 2014年公開/80分
監督:江藤孝治 出演:加藤翼(現代美術家)
http://mitaoya.com/

【スライド写真について】
1 ご本人ポートレイト
2 『僕らのカヌーができるまで』 (c) 「僕らのカヌーができるまで」製作委員会
2隻のうちの縄文号。インドネシアから石垣島まで4,700kmを足掛け3年にわたって航海した。
3 『僕らのカヌーができるまで』 (c) 「僕らのカヌーができるまで」製作委員会
縄文号の材料になったビヌワンという大木とクルーの佐藤洋平(関野ゼミ卒業生)
4 『ミタケオヤシン』 (c) グループ現代
かつてインディアンたちを苦しめたボーディングスクールのミニチュアを、力を合わせて引っ張り倒す。

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カメラを通して、人と向き合い、人に伝えるおもしろさ

− 大学時代における最大の出会い

僕が入学した頃はロハスや持続可能性という言葉が流行っていて、デザイナーもただモノをつくるだけではいけないという風潮がありました。僕も一丁前に触発され、どうしたものかと考えた。そんなときに、探検家でありムサビの文化人類学教授でもある関野吉晴先生と出会ったんです。
関野先生はシラバスに「人類はどこから来て、どこへ向かおうとしているのか」という、ポール・ゴーギャンの絵を思わせるようなことを書いていて、もしかすると先生自身が何か答えを知っているのではないかと。それで関野先生の課外ゼミへの参加を決めたんです。

− ドキュメンタリー作品『僕らのカヌーができるまで』への思いは

学部の卒業制作として初めてドキュメンタリーを撮ったのですが、「カメラを通してじっくりと相手に向き合い、記録したものを編集して誰かに伝える」ということが非常におもしろく思えました。そんなとき、ちょうど関野先生の課外ゼミで「ムサビの学生とカヌーをつくって旅に出る」という企画が立ち上がったので、まっ先に記録係として手を挙げました。
先人の知識に学びながら、すべての素材を一から手づくりしてカヌーを完成させるという試みは、非常にエキサイティングでした。なにしろ、カヌー用の木を切り倒す鉄斧をつくるために、千葉県九十九里浜海岸で120kgの砂鉄を集めるところからのスタートでしたから(笑)。カヌーづくりの行程を追って現場に入るたび、自分の小さな常識がことごとく覆されました。
ついに2隻のカヌーができあがったのは9カ月後。その後、複数の記録係が撮った映像を私が代表して1本のドキュメンタリーにまとめたのですが、制作経験が少なく苦労の連続でした。できあがった作品が映画館で公開された日はとにかく感無量でしたね。この経験をきっかけにテレビドキュメンタリー系の映像制作会社への就職を決意しました。そして今、ドキュメンタリーの監督・ディレクターとして作品を手掛けています。


120kgの砂鉄を製鉄した、武蔵美の金工工房。武蔵美生を巻き込み、手づくりのふいごを交代で一晩中踏み続けて、風を送った (c)「僕らのカヌーができるまで」製作委員会


協力してくれた現地の木こりたちと一緒に、川を使って運ぶ (c)「僕らのカヌーができるまで」製作委員会

− 次の監督作品『ミタケオヤシン』で伝えたいことは

現代アーティストの加藤翼さんはムサビの卒業生(東京藝術大学大学院修了)で、その土地を象徴する巨大な立体物を打ち立て、ロープで引っ張って、倒したり起こしたりする「引き倒し」「引き輿し」という参加型アートプロジェクトを各地で行っています。この映画は加藤さんがネイティブ・アメリカンの人々と行ったプロジェクトのドキュメンタリーです。経済や国の政策では救いようのないものを乗り越えるためにアートが果たす役割を強く感じ、また、その力を目の当たりにして、ドキュメンタリーを通し伝えていくことの必要性を感じました。
(※タイトルの「ミタケオヤシン」はネイティブ・アメリカンのスー族の言葉で「すべては連環している」という意味。)


集まってくれたインディアンたちとともにロープに手をかけ懸命に引っ張る、現代アーティストの加藤翼 (c)グループ現代

− 仕事でいちばん大切にしていることは

自分を疑うこと。自分がすごく狭い世界に生きていて、色眼鏡で周囲を見ていることに自覚的にならないといけないと思う。硬直化せず、謙虚に、しなやかでいることで、初めて人を理解するためのコミュニケーションが可能になると思います。

− デザインやアートの力とは

加藤さんのプロジェクトからも感じられることですが、デザインやアートには社会の通説や仕組みを微細でもズラしたり、動かしていける可能性があると信じています。さらに、世界がいかに多様であるか、という事実を表すことも役割だと思う。関野先生は「食べ物は腹を膨らませる。アートは心の空腹を満たす」と仰っていて、アートが実際の暮らしの役に立つかとか、金になるかという基準で語られているうちは、核心にはたどり着けない気がしています。

− 今後の展望は

目の前の仕事を真摯に丁寧に、はもちろんのことですが、できるだけ遠くにボールを投げることを意識しようと思っています。それは、「今ここ」のための表現にとらわれ過ぎず、常に未来を仰ぎたいということです。とはいえ、ボールを投げるための筋力を身につけるのは大変。それこそ思ってもみないような出会いを重ね、自分の感性を耕すことから鍛えられていくのかなと。まだ、あまりに未熟者なので、こつこつ筋トレを続けていきたいです。

− ムサビで学ぶ学生にメッセージ

カヌーづくりで痛感したことですが、大学というのは「試行錯誤に時間をかけることが許される場所」です。失敗する怖れもなく、自由に何かに取り組める。その結果、成功することもあれば、すべてが徒労に終わることもある。それがいかに貴重な時間であることか!
特に美術大学はそれが実践できるかけがえのない場所ですから、常に自ら動いて、さまざまな人や物事と出会ってほしいなと思います。

− 編集後記

人生に強烈な影響を与える人や、仕事につながるような決定的な事柄に出会う、というのは、実はいうほど簡単なことではない。それは本人が強烈に「出会いたい」と意識していないと、出会えないものだからだ。江藤さんが関野教授と出会い、カメラという武器であり相棒を手にした場所がムサビであることは素直にうれしかった。これからも真摯な眼差しで、ユニークな作品を撮っていただきたい。

取材:堀香織(92学油/フリーランスライター兼編集者)

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