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HOME  > 卒業生インタビュー  > No.16 小沢 敦志 [OZA METALSTUDIO主宰]

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No.16 小沢 敦志 [OZA METALSTUDIO主宰]

小沢 敦志(おざわ・あつし)
OZA METALSTUDIO(オザ・メタルスタジオ)主宰
(2002年度 武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科 金工専攻卒業)

1979 栃木県宇都宮市生まれ
2003 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 金工専攻卒
個展、グループ展多数開催。

【主な展覧会・イベント】
2012 小沢敦志展「STARDUST」(sundries/青山)
2013 瀬戸内国際芸術祭(宇野港、高松港)
2017 アートイベントいちはらアート×ミックス2017(千葉県 市原市)

鉄の廃材を加熱して叩くことで見えてくる有機的な姿を、「人工物が自然物に還る姿」として表現していく。
そして設置される場にふさわしいフォルムに再構築した作品を制作。
また現在は、各地でワークショップを重ね、長期的に作品を増殖させ、
その土地や人との結びつきを強めながら、「成長するパブリックアート」をつくり上げていくプロジェクトがスタートしている。
http://ozametal.com/


【スライド写真について】
1 「地熱の扉」アートイベント「いちはらアート×ミックス2017」出品作品。
人工物と自然物、あるいは過去と未来の境界に立つ、一枚の鉄扉である。
2 「地熱の扉」部分写真
3 「一冊の街」 立川市庁舎 ワークショップ参加者が叩いた鉄のモノが1冊の本に集約されている。
4 ご本人ポートレイト

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バランス感覚を大切に、新たな価値観を見出したい

− ご自身の鉄作品制作のスタイルを教えて下さい

例えば工具、農機具、キッチン用品など、機能を持つ文明の利器をプリミティブな鉄に戻していく作業です。火で真っ赤になるまで熱して、金槌で叩いて、機能を取り払ってあげて…素材本来の自由で有機的な姿を表現しています。でも、それらが道具であったことを否定したり、工業製品を批判するような作品ではありません。人工物と自然物のちょうど中間地点というか、人間が関わったことの名残が完全に消えてしまってはならないと思っているんです。


加熱した鉄の廃材を叩く様子


叩いてできた大量のパーツ

− 「人の痕跡」は小沢さんの作品にとって大切なキーワードだと思うのですが、特に印象に残っている作品はありますか

2013年の瀬戸内国際芸術祭での作品ですね。ワークショップ参加者が叩いた鉄が彫刻に取り付けられて、増幅していき現在も形を変化させています。それから地元の人ともすごく仲良くなれて、そのつながりから更に面白いできごとが色々起きたりしました。自分のアイデアと地元の人のアイデアの接点からあっと驚く新たな何かが生まれる。今回取り組んでいる「いちはらアート×ミックス2017(2017年4月開催)」でのプロジェクトも、そういう風にできたら良いと思います。


「IRON ANIMALS」ゆしまや保育園/福島県いわき市 温泉宿をリノベーションしてつくられた保育園。かつてそこで使われていた金物を叩いてつくった動物たちのレリーフが設置されている。場の歴史が未来の担い手である子どもたちとともに存在する。

− 仕事で大切にしていることは

バランス感覚です。自分の考えと依頼主の考えの交錯するところの点を見つけて仕事をしたいと思っています。自分と仲間たちの能力をうまくコーディネートしてひとつのものをつくり上げることも好きです。

− 現在「旬」なことは

カラフルに塗るというのをなんとなく御法度にしてきましたが、2014年頃、保育園の仕事をきっかけに色を使いはじめました。今までの「黒」だけではない表現にも可能性を感じています。


「終点の先へ」岡山県玉野市/宇野港 「終点」とは、「今は通っていない連絡船が活躍していた時代の終点」「JR宇野線の終点」「鉄の道具の終点」。その先の道をつくろうというコンセプトのもと、往時の連絡船の色と船名が施された作品。

− 今後の展望は

未来を感じさせるような作品を作りたいですね。これまではプリミティブな鉄に「戻す」という制作スタンスなので、アンティークな風合いの作風になりがちですが、今後は自分の叩く手で、誰も見たことがないような新しい世界を生み出したいと思っています。

− ムサビ生に向けてメッセージをお願いしたいのですが

あまり自分のスタイルを決め過ぎず、好き嫌いせず。デッサン力を養ってほしい。写実的に描けるようになろうという意味ではなく、目の前のモチーフから面白いポイントを探し出す、という意味でのデッサン力です。その発見を元に、魅力的な作品をつくり上げて欲しいです。

− 編集後記

ムサビの金工で初めて鉄を叩いて楽しかったという小沢さん。飽きずに愚直にやって来たと語るように、正にその継続の力が成功の秘訣だったのでしょう。その成功は、ビルの解体作業や5000本もつくったというカトラリーの仕事など、多大な努力を経て勝ち取ったものだということもわかりました。
取材場所は2017年4月から始まるアートイベントの会場、千葉県にある小湊鐡道「飯給(いたぶ)駅」近くの旧里見小学校でした。制作中の作品を拝見し、土地の風土や人々と響き合いながら、ここにも「あっと驚く新たな何か」が生まれようとしているのだなと感じました。

取材:千田道代(14通デコミ/小・高美術講師)
写真:本人ポートレイト以外、ゲスト提供

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