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HOME  > 校友発掘キャラバン > No.20 小林 斐子[染織作家]

[msb! caravan]

No.20 小林 斐子[染織作家]

小林 斐子(こばやし・あやこ)
染織作家
(1968年度 武蔵野美術大学造形学部美術学科日本画専攻 卒業)

1947年、福島県相馬市で生まれる。
15才の頃、東京で兄と暮らす。
公立の中学・高校に通うかたわら、日本画家の佐藤土筆氏、洋画家の溝江勘二氏に師事し、絵画の基礎を学ぶ。
その後、武蔵野美術大学に入学。在学中、宮本常一氏の民俗学の講義を受ける。
大学4年生のとき、沖永良部島で芭蕉布に出会う。
時代は高度経済成長期、手仕事がほろびそうな気配に奮起する。
卒業後は岐阜県郡上八幡在住の紬織作家、宗廣力三氏に植物染め、紬織を学ぶ。
後に滋賀県高島市に移住。
年一度、京都のギャラリー清滝テラにて個展、自宅工房にてオープンアトリエ「あけっぴろげ」を開催。
Tシャツ、ジャケット、タペストリーなどの植物染め織物や、絵画などの作品制作を行っている。

 

【スライド写真について】
1 本人ポートレイト
2 草木染めされた生活衣類(靴下やストール)
3 草木染めの衣類(ジャケットやコート)
4 真綿の手紡ぎワークショップ

プロフィールを見る

母として女性として人としての在り方を考えながら
「どんな時でもやりたいことを続けてきた」

− 職業の決め手は

学部4年の頃に沖永良部島に行き、そこで芭蕉布に出会いました。地元のおばあさんから「元々は自分たちで紡いで織って日常着として着ていた。だけど賃仕事に出るようになって、生活のためにつくることはなくなりつつあり、自分の代より先はもう誰もつくらなくなるだろう」と聞きました。その織物がとても素敵だったこともあり、また宮本常一先生の民俗学の講義で学んだ「自分たちの暮らしの中で培われたものがいかに大事か」ということが強く印象にあったので「若い時に伝統的な工芸を身につけなくては」という使命感に燃えました。色々と調べ最終的に辿り着いたのが郡上紬。卒業後2年間の徒弟制度で、分業作業ではなく多くの工程を一貫して学んだことが大きいです。


オープンアトリエ「あけっぴろげ」開催中

− 学生時代のエピソードは

児童画教育研究会やリアリズム美術研究会に入り、近くの幼稚園に紙芝居をしに行ったり、政治と美術について先輩や他の科の人たちも交えて語り合ったり、文化祭の実行委員もやりましたね。破茶滅茶で楽しかったです。時代がちょうど70年安保闘争の少し前でしたから、真面目に日本の動向を考えていましたし、行ける時にはデモにも参加していました。卒業後でも絵を描いて暮らしていくということは当時は一部の人にしかできない贅沢なことだったけれど、そうではなくて、自分は一般市民の生活文化向上のために作り手の「手」になっていかなければいけないと思っていました。

− 仕事で一番大切にしていることは

結婚をして子どもを育てながらでも自分のしたいことをするということ、これは常に譲らなかったですね。
どんな状況でも絵を描くことを続け染色に活かしたり、時にはハガキを描いたりして、何かの所為にせず、その時にできることを表現する。それをとにかく続けるんだということを大事にしてきました。


ギャラリー清滝テラでの個展

− 現在旬なことは

地元の郷土史の中に女性が暮らしてきた記録がほとんど記されていないことに強く違和感を覚え、創作活動と並行して、地元の「女性史」を冊子にまとめる前提で有志数名と聞き取り調査をしています。今は表向き、制度的には男女平等ということになっていますが、慣習とか社会的な状況から言えばやはり男性が「主」で女性が「従」だという考え方が根強くあり、田舎では男性よりも女性が表に出ると叩かれるという現実がいまだにあります。そこで、ジェンダー学を学ぶための映画会を研究者の方にも参加してもらい一緒に開催しています。どうしたら本質的に豊かな社会になっていくのかを色々な角度から見ていかなければ、と思っています。

− 今後の希望、企画は

自分たちの暮らしの中で衣装としてもインテリアとしても、草木染めでもっと何かできないかなと思っています。裕福な一部の人だけのものではなく、普通の庶民生活の中で「臆さずに自分で染めてみる」ことの大事さや、それをものにしていくということをもっと広めたいと思っています。展覧会としては年に一度、秋に京都のギャラリー清滝テラで開く個展と、春のオープンアトリエ「あけっぴろげ」があり、他には約2ヶ月に一度グループ展などに参加しています。

− 夢をかなえるために大切なことは

生活の資金を得ながらでいいからとにかく創作をし、続けられるような仕事のやり方をする。どんなにいい技術や感覚を持っていても腐らせてはいけません。自分を励ましつつ、周りを巻き込んで発表しつくり続ける。これが周りに波及して「ああ、人生は何か決まった形じゃないよね、好きにやっていいんじゃない?」って思う人が増えてくる。そうして生きていくことそのものが表現となる。権力が押し付けてくるような美しさではなく、自分が思う美しさを大事にして表現していくこと、それに共感を持つ人を増やしていけばいいと思います。

− 美術やデザインにできることは

個人個人がいかに気持ちよく暮らせる空間や社会をつくるかということ。特にこれからは人間の生活によって地球環境を破壊しないよう、むしろ可能な限り資源や環境を再生していくような生き方を提言していく必要がありますね。例えばなるべく化学繊維は着ないとか、天然繊維を繰り返し染め直し擦り切れるまで着るとか。草木染めはそういう意味でも力があると思います。


お庭は野草の宝庫です

−  編集後記

安曇川駅から少し離れたご自宅兼アトリエで開かれているオープンアトリエ「あけっぴろげ」初日の小林さん宅には次々にお客様がいらして作品を眺めたり、おしゃべりしたりとても和やかなサロンのようでした。「ちょっとお庭も見てみる?」と案内されると木々や草花が生い茂り山藤が上の方で誇らしく咲いていました。草の中へ手を入れるとあっという間に食べられる野草を片手いっぱいに摘み「三ッ葉なら食べ方わかるでしょ」と嬉しそうな小林さん。瞬時に有用な植物を探し出せる植物専用の眼を持っているみたいでした。熱く力強くひたむきに続けてきた創作活動と社会的活動の両輪でどこまでも伸び伸びとたくましく走っていかれることでしょう。

取材:林 葉月 (98学基/「甘夏ハウス」主宰)

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