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[msb! caravan]

No.28  山田 義明 [ウッドワーククリエイター、yyミレニアム家具工房 主宰]

山田 義明(やまだ・よしあき)
[ウッドワーククリエイター、yyミレニアム家具工房 主宰]
1989年度 武蔵野美術大学短期大学部 デザイン科工芸デザイン専攻 機器コース 卒業

プロフィール:
1968年生まれ。大学ではFRP樹脂を用いたデザインを専攻、卒業後はプラスチック製品を扱う総合商社にてプロダクトデザイン・商品開発を担当。その後、ディスプレイデザインなどにも携わり、木工技術訓練所で技術を磨き、木曽三岳奥村設計所で修業。長野県朝日村のクラフト体験館の指導員を経験後、自身の工房を開設。現在は、朝日村のカラマツを使った家具の制作と福島支援の「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」の活動を行っている。

【スライド写真について】
1. 本人ポートレイト
2.長野県塩尻市で定期的に開催されている「木育フェスタ」。
山田さんのオリジナルの勉強机や椅子が並ぶ。つくり手の想いを直に使い手に伝えることができる大切な機会となっている。
3.山田さんがデザインしたスピンドル(糸紡ぎ器)のキット。
レジン(樹脂)の中に葉っぱなどを閉じ込めて、オリジナルのスピンドルをつくることができるように考えられている。
4.備中茶綿

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人に感動してもらうことを第一に考え、全力を尽くしたものづくりを

−ムサビに入ったきっかけや、学生時代のエピソードは

家業がプラスチック金型成型の工場を営んでいた影響もあって、武蔵野美術大学短期大学部では、主にFRP樹脂を用いたデザインについて学びました。学園祭でFRP樹脂を使い大きな宇宙船をつくったり、競技ダンス部に所属し2年のときには部長を務めたりした記憶が懐かしいです。卒業旅行でガウディの作品を見るため、スペイン旅行をしたのもよい思い出です。学部編入を希望していましたが止むなく断念し、卒業後半年間は聴講生として授業をとっていました。

−現在の職に就いた決め手

卒業後に日用品の総合商社で商品開発に4年携わってきましたが、安価な安定供給できる製品よりも、手づくりでこだわりのある品をつくりたくなって退職しました。その後数年間、知人のディスプレイデザインの仕事を手伝っていましたが、その時に本屋でデンマークの椅子の作品集を見たのが、家具職人を目指すきっかけとなりました。まず、職業訓練校で木工技術を学び、木曽三岳奥村設計所で注文家具をつくる仕事に3年就きました。だんだんと自分のデザインでものをつくりたいという思いが募ってきて、アルバイトをして貯めたお金で自分の工房を持ちました。朝日村を選んだのは、この村のクラフト工芸館の指導員をしていたことがきっかけでこの場所が気に入ったからです。


山田さんがデザインした勉強机

−工房ではどのような作品をつくっていますか

朝日村はカラマツの産地ということもあり、カラマツを使った木製品に力を入れています。扱いにくい木ですが、技術も向上し、成形合板で木目を生かした無垢の机や椅子などを制作しています。村の小学校の椅子や机は、山から切り出したカラマツを使ってつくりました。340セットを納めるのに3年くらいかかりましたね。また、村役場の新庁舎のオフィス家具や保育園の家具も手がけています。子どもたちが使ってくれているのを目の前で見ることができ、つくり手と使い手が近いというのも嬉しいです。


数年かかったという保育園児の椅子。扱いにくいカラマツを、成形合板の技術で木目の美しさを活かした椅子に仕上げた。

−仕事で大切にしていること

お客さんに感動してもらうことを第一に考えています。この金額だからここまで、ではなく必ず喜んでもらいたいと全力を尽くして制作しています。作品には余分な飾りはつけず、木本来の素材の良さをお客さんに見せたいと思っています。オーダーしてくれた人ひとりひとりの顔が見られることにも、満足感を得ていますね。

−美術、デザインの力とは

「世の中を楽しくすること」シンプルに考えています。あまり堅苦しく定義するものではなく、楽しく、面白くするもの。それがデザインの力です。

−夢をかなえるためにひと言

自分らしくいること。人の真似をしてみたり、人と比べるのではなく、自分の持ち味一本で突っ走ること!力業でいいんじゃないかと思います。僕は2015年の3月24日に自分の工房を火事で失ってしまいました。それからは、知人の谷口泉さんが主宰する泉家具工房にお世話になっています。火事を起こしたときはただ申し訳なくて、何もできず、意見も言えず、自分で自分のことが認められない日々が続きました。そんなとき、自分らしく生きていないのは、死んでいるのと一緒だと気が付いたんです。誰になんといわれようと、自分らしく生きることはできる。そうして本来の力が出せるようになりました。

−今後の展望

火事でほんとんどのものを失ったときに、悲しさとともに「何処にでも行ける」ということにも気がついて、ずっと何かお手伝いがしたいと思っていた福島にボランティアに行きました。「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」で綿栽培のボランティアを経験したんです。そのことがきっかけで、今でも糸をつむぐチャルカ(糸車)やスピンドル(糸つむぎ器)、綿繰り機などの制作でそのプロジェクトに関わり続けています。福島の応援に繋がるこの活動に、多くの人に興味を持ってもらえたら嬉しいです。


構想中の「福島ふたばSpirits」という活動。全国に展開し、いろんな芽生えを各地で起こしていきたいという山田さん。日本だけでなく、福島を応援する活動を海外にも広めていきたいそう。


初めての綿栽培、福島からの綿の種が実を結びました

−  編集後記

これから福島の綿栽培の活動にかかわっていきたいと話していた山田さん。手づくりのオリジナルスピンドルや、試行錯誤してつくったという木のぬくもりを感じられるチャルカ。家具をつくり、綿をつむぎながら、木育フェスタや綿つみワークショップなどを通して人と人とのご縁を繋いでいく活動もされています。「手仕事って人と人とを繋いでいくと思うのです」と、福島オリジナルの糸つむぎの道具をつくりながら、福島を応援する活動をしていきたいと話してくださいました。

取材:磯部藍(らん)(06通工生デ/文筆業・研修講師
ライタープロフィール
取材記事やマナーに関する書籍などを執筆
http://www.isoberan.com/

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