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[news] msb! トークリレー

msb! トークリレー03【スケッチが創る「想いから形へ」】

スケッチで構想してきた50年

1977年度 造形学部建築学科卒業
小林 康夫(大阪支部長)

【スライド写真について】
1.卒業制作「中間領域」、1978
2.竹中海外研修 フィレンツェにて38歳、1989
3.心斎橋そごうスケッチ、2005
4.「手書きが創るものづくり」セミナー企画、2020

早すぎた自叙伝*
話は70年安保闘争にほとほと疲れていた1973年にさかのぼりますが、在籍していた大学を中途退学し、流行っていたヒッチハイクで各地を放浪していた私は、翌年春、何の準備も躊躇もなく、芸大を受験しました。建築学科の3次面接では亡くなられた山本学治さんに代わり、急遽、前野堯さん(建築修復保存)の面接がありました。「私は毎日飽きずに対象を見つめる学生が欲しい」という言葉に、純粋さと産学協同的な感覚がの同居していた私には、芸大は似合わないと悟り、その年自由な雰囲気を感じていた武蔵野美術大学の建築学科に即入学しました。子供の頃、神戸の実家でした酒屋商店のきな臭いカウンター下のモルタル土間に、ろう石で絵を描いていた楽しさが、確かなものとして感じられた瞬間でした。

コミュニケーションツールとしてのスケッチ「想いから形へ」
ムサビではゼードルマイヤーの「中心の喪失」やピラネージのエッチングなど近代美術、建築等に没頭する中で、建築設計課題の作品は水彩とスケッチで描いておりましたが、それまで自分の感性に頼っていた建築空間創りが、坂本一成さんの設計の授業で、初めて想いを論理構築する習慣が身につき、想いから形への過程を、スケッチしながらコンセプトワーク するようになりました。卒制もガッシュで描いた構想スケッチでした。当時の私は大変無邪気だったのだろうと思いますが、1978年入社試験の図面審査ではでは、コンセプチュアルアートのような水彩図面の丸まった紙を手で押さえ、40分もコンセプトを話したもので、審査された国立劇場設計の岩本博行さんに「青天の建築やな、誰もが使える空間というのは共産主義的や」と笑顔で言われたのが忘れられません。そんな私を許容していたのは当時の懐の大きい企業でした。それから35年、勤めた企業設計部での設計は、全てビジュアルスケッチでの応答から物事を詰めていくやり方を徹底し、「想いから形へ」を実践していました。職人とのディテールの打ち合わせから、建築主への提案まで、CADの時代になってもスケッチは私の仕事でのコミュニケーションツールであり続けました。「心斎橋そごうの設計」では建築主提案でも手書きスケッチと多数のモデルを優先してプレゼしたものです。長らく村野藤吾さんの模型製作に携わってこられた三浦良雄さんには、私の手書きスケッチからモデル創りをしていただくなどお世話になり、後に三浦模型の展覧会を、私達の作品を通じて紹介させていただきました。

校友会でのスケッチドローイングを通じてのコラボ
退職後懐かしいムサビに恩返しをすべく、校友会大阪支部でお手伝いさせていただくことにしました。古い町並みや建築を学びながらスケッチする「スケッチハイク」企画や、ホルベインなどの画材企業とのコラボレーションやインテリアプランナー協会との協賛「ランドスケープセミナー」など毎年新しい企画を考えながら会運営をしてまいりました。2020年春、建築学科同窓の宮岸さんと知り合い、OBの奥山清行さん、中島信也さんとの学生を交えたバトルセッション「手書きが創るものづくり」を企画し、宮岸さんの在籍されていた大学のラーニングコモンズで、スケッチドローイングの楽しさを語り合う予定でしたが、折からのコロナ感染により、大阪からの企画発信の目論みは実現しませんでした。しかし現在も校友会の対面行事が制限される中、リモートワークによる可能性拡大で、逆に関西各支部のアーティスト同士のコミュニケーションがとりやすくなったという喜びがありました。こんな閉塞した環境の中でも、支部展にもテーマを設け、2020年から「夢マルシェ」「共にアート」、今年は「Gift」というテーマで喜びを分かち合いたいと思います。私自身は都市・建築環境での再生イメージをスケッチと水彩の構想作品として創っていきます。今後支部の若返りと、誰もが一度は支部盛り上げに参画できるよう、執行部の新陳代謝を測ることができればと考えています。

スケッチから構想する素晴らしさを学生に伝えたい

手を動かし考えながらスケッチするということが、人類に与えられた動物的本能ではないかと思っており、二つの学校の設計製図の実習やゼミ授業の中でも、学生には口頭でお話しする以上に、必ずスケッチブックに書き殴りのスケッチで、ビジュアルに意志や想いを伝えることにしています。デジタルで作成されたデータからは個人の感性や表情を読み取れません。人が人らしい想いを伝えられる、直感的なツールがどれだけ、人に訴える力があるのか、理解をえられるのか、企業勤め時代の経験値から認識しております。学生とともにスケッチ会話を通じて建築空間の素晴らしさや、構想する喜びを共有し続けたく、その成果を毎年再生展と称して自身の設計による京都伝統工芸館にて展覧会を催しています。そして武蔵野美術大学の構想学部こそ、そういった想いや構想をまずはスケッチ、エスキースから始める必要のある学部ではないのだろうかと考えています。

*「早すぎた自叙伝」アル・クーパー1972年

現在、開催期間中の情報

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