ムサビの仲間に支えられて

2004年度　造形学部芸術文化学科卒業
松川 令恵子（ビジュアルマーチャンダイザー）

【スライド写真について】
1,2.NEW YORK,MADISON AVENUE store opening　2017年6月6日
3.PARIS,SAINT HONORE store refurbishment　2018年8月14日
4.PARIS GALERIES LAFAYETTE Popup store　2021年11月17日

崖っぷち人生
子供の頃から数々の失敗を経験し、いつもギリギリの人生をすり抜けてきた私ですが、そんな私でも唯一誇れることはいつも素晴らしい友人たちに恵まれ、支えられてきたということです。そしてその友人たちとの出会いの多くはムサビを通してでした。

ムサビの入学も卒業も一筋縄には行かず
まず、私は大学の入試に落ちました。念の為補欠でもありません。一浪を決めて予備校の願書を取り寄せたある日 「繰り上げ合格のため、入学金をお支払いください」との電話が大学からありました。半信半疑でしたが、後日本当に入学手続きが届き、何とか無事に入学。

大学生活は本当に楽しく、見たことのないような個性豊かな学生そして教授の方々との出会いがあり、授業内容も中学・高校では味わえなかったような充実した内容でした。そして大学生活の中で出会った友人たちは皆、優秀そのもので卒業後の人生でも各界で、活躍し続けています。

卒業を目前に卒業旅行と称してモロッコへ。その当時まだガラケーが普及し始めた頃で、就職が決まっていなかった私は、旅先でエントリーした会社からの返信をチェックするために、現地のネットカフェへ行きました。しかし、届いていたのは希望会社からの返信ではなく、母からのメール。なんと大学から単位が足りず、卒業出来ないと連絡があったと……。これはマズい。ここでもやはりピンチを救ってくれたのは、美人で頭脳明晰な友人でした。ちょっとここでは書けない手段を編み出し、何とか最終的に単位を頂き、卒業。卒業式には間に合わなかったので、本当に卒業出来たのか、恐る恐る卒業証明書を取り寄せて確認する始末。結果は無事に卒業出来ておりました。

社会人になって
私はビジュアルマーチャンダイザーという仕事をしていますが、簡単に説明すると、ブランドの推したいイメージと売りたい商品をうまく組み合わせて、ディスプレイをしていくものです。各ブランドによりアプローチは異なりますが、売り上げだけに走ってコマーシャルすぎるディスプレイもNGですし、イメージばかりで全く売れないディスプレイもNGです。うまく会社の売上をあげつつ、店舗や仕入れ部門とうまく連携を保ちながら、お店作りをしていくお仕事ととなります。本国本社ではそれに合わせて、指針となる各月のディスプレイの見本として、ガイドラインを作成して配信する役割もあります。これは、売り上げを大きく左右するので、各部署とどの商品をどのようにディスプレイするのかを綿密に話し合って、各国に指示を出し、その後、レポートでチェックと修正の指示を出していきます。

30代半ばで渡仏
この仕事についても 、 やはり ピンチはやってきます 。 30代半ばで働いていた某ラグジュアリーブランドで、本社フランスへの転勤のチャンスを掴み渡仏。数年間同社でディスプレイのグローバルチームとして、各地を駆け巡りました。しかしその数年後、突然人事に呼び出されて 「アナタ明日カラモウ来ナイデ下サイ」 とのこと。マネージメントが変わり人事を一新。ダンボール箱に荷物を詰めて、今すぐに出て行ってください、との理不尽なお達しでした。しかし、その時も弁護士を紹介してくれたり、会社との退職金の交渉方法を伝授してくれたり、何より精神的にかなり疲労困憊していた私を支えてくれたのは、ムサビ出身で同じくパリに住む友人たちでした。今はお陰様で別会社に転職が叶い、忙しい毎日を過ごしております。

自論ですが、ピンチやチャンスを私は恥ずかしがらず、周囲の人々に伝えます。そうすることによって物事は動いていくし、友人の存在と助言がいつも私を支え続けてくれました。大学生活を通してそのような出会いに恵まれたことは、私の人生の中で何にも代え難いものです。

願わくば、これからの人生あまり災難に見舞われませんように。今後も友人達の助言を良く聞き、失敗を繰り返さないように励んでいければと思います。