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HOME  > 卒業生インタビュー  > No.22 青柳美どり[美術共育実験室 Miro Art Lab 主宰/創造性共育士 こども環境学会 こども環境アドバイザー]

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No.22 青柳美どり[美術共育実験室 Miro Art Lab 主宰/創造性共育士 こども環境学会 こども環境アドバイザー]

青柳美どり(あおやぎ・みどり)
美術共育実験室 Miro Art Lab 主宰 創造性共育士
こども環境学会 こども環境アドバイザー
(1996年度 武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科 卒業)

大学卒業後、デザイン会社を何社か経験したのちに、フリーランスとして独立。東京の元麻布にて、子どもから大人までを対象とした「美術共育実験室 ミロアートラボ」というアート実験室を開校。子どもたちそれぞれの意思や個性を尊重し、個々の感性を生かすことが重要であるというレッジョ・エミリアの幼児教育実践法にヒントを得て、アートの創造的経験を通して子どもの可能性を育てる活動を行っている。
Webサイト:http://miro-art.org/

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「やってみたい」という気持ちを大切に、アートを通じて人を育てていきたい

− ムサビに入ったきっかけや、学生時代のエピソードは

入学するまでは進学校に通っていて、美大を受ける予定はありませんでした。けれどあるとき高校の恩師に、自分の好きなもの、軸となるものを見つめるきっかけをもらったことによって、幼い頃から絵をかくことが好きだったことを思い出し、美大に入ることを決めました。グラフィックデザインの分野では、Macがちょうど大学に入ってきたばかりの頃でした。ルームシェアを一緒にしていた友人の勧めで「造形教育研究会 アトリエちびくろ」というサークルに入り、そこで子どもと遊びながら学ぶ楽しさを知りました。またバックパッカーとして、ヨーロッパ、アメリカなど世界中の美術館を訪ねたことも刺激になりました。

− 「美術共育実験室 ミロアートラボ」はどんなアート教室ですか

「今日は、これをつくりましょう」ではなく、子ども達の「やってみたい」という気持ちをアートでお手伝いしていく共室です。アートの語源のひとつはギリシャ語のアーモス。つなぎ目、つなぎ合わせるという意味合いがあります。アートは粒子みたいなもので、ひらめきや創造性が浮上し融合したあっ!という瞬間に世界の見え方が変わって、閃きや気づきが生まれたとき、それらの粒子がつながるような感覚があります。そんな繋がりを大切に、子どもはもちろん、大人の方に対しても、自分にとっての真理を探っていくサポートができればと考えています。

− 現在の職に就いた決め手

19歳のとき、あるアーティストの「10年経ってもできないヤツはやらないだけだ」という言葉に出会い、それから10年単位で自分がしたいことを思い描いてきました。「麻布か青山に事務所を持つ」と決め、28歳で西麻布に事務所を構えました。アートディレクターとしてだけでなく、広い視野で「人を育てる」ことを目標に掲げました。アート実験室を始めたのは、2001年に出会ったレッジョ・エミリア・アプローチという幼児教育法を、自分の子どもにも受けさせたいと思ったことがきっかけでした。デザイナー業の傍ら近所の子どもたちを集めたのが始まりで、その後、実際に現地の教育方法を肌で感じるためイタリアのレッジョ・エミリア市を訪れスタディツアーにも参加しました。帰国してからは、「内発的動機づけ」が大切であるという考えのもと、人の「やってみたい」という気持ちをアート実験室という場でお手伝いしていきたいと思っています。共室の大きな机の上には、色別に様々な素材が並べられています。「今日はこれを作りましょう」と課題を設けて教えるスタイルではなく、じっくりとコミュニケーションを取り合いながら子どもの「やってみたい」という気持ちに寄り添ったサポートをしています。


レッジョ・エミリアの幼児教育に出会った本。子どもたちの「できた!」という感情が同時に見守っている私にも伝わってくる感覚、その関係性がアートそのものだと思います。

−仕事で大切にしていること

「手放すこと」。固定観念や思い込み、こうあるべきという考えを手放すことが大事だと思っています。あらゆるものは変化していくということを信条に、人を信じて相手にゆだねることを大切にしています。もっとゆるやかな、余白のある生き方というのをサポートできる環境や空間をつくり出していきたいです。


よく人工物というけれど、どれも広い視野では、すべて地球の自然からつくられているもの。先入観や思い込みを手放すことが大事だと思います。

− 美術、デザインの力とは

全てのものを生み出し、つくり上げるエナジーの粒子みたいなものだと思っています。愛しいものに触れたいと感じる脳の活動、実際に手を伸ばさせるもの、美しいと感じた時に私たちに息を飲ませるエナジー。そういった些細な日常の中に表出している「人にそうさせているもの」そのものがアートの力。仕上がった作品だけでなく、その過程での熱量の積み重ねがアートであり、それを感じられることで人生が豊かになると思います。

− 今後の展望

移転したばかりの新しいアトリエですが、子どもも大人も「やってみたい」という好奇心のタネに自分自身で気がついて、それを自分の手足を動かしてやってみる、という環境を今後もつくり上げていきたいですね。ここのアトリエは、来る人を大きく受け入れてくれるような懐の深さと信頼感があり、自分の真理を見つめることができるアートの空間を目指しています。遊びと学びとアートの「共室」として、同じような場所が日本中、世界中にある街角のパン屋のように、広がって欲しいと思っています。


新しい教室は窓が大きくて開放的。また新たな作品がたくさん生まれそうです。

−  編集後記

アート共室は生徒さんがつくった作品に囲まれた空間で、温かな気持ちになります。どの人の作品も、ワクワクしながらつくったそのプロセスを感じさせるものばかり。自分に湧き上がってくる「やってみたい」という気持ちに素直につくられたものには、強いパワーを感じます。そんな子どもたちの自由な発想を温かく見守る青柳さんの信念は、「やるだけ」「DO!」というもの。必要なものは、すべてあとからついてくる。過去は見えているけど、未来は見えていない。自分が歩んできた道を見つめながらも、未来に足を一歩進ませることが大切だと語ってくれました。

取材:磯部藍(らん)(06通工生デ/文筆業・研修講師
ライタープロフィール
取材記事やマナーに関する書籍などを執筆
http://www.isoberan.com/

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