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HOME  > 卒業生インタビュー  > No.36 中丸 ひとみ[日本郵便株式会社 郵便・物流事業企画部 切手・葉書室 切手デザイナー]

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No.36 中丸 ひとみ[日本郵便株式会社 郵便・物流事業企画部 切手・葉書室 切手デザイナー]

中丸 ひとみ(なかまる・ひとみ)
日本郵便株式会社 郵便・物流事業企画部 切手・葉書室 切手デザイナー
( 武蔵野美術大学短期大学部 生活デザイン学科 編集コース卒業)

短大卒業後、東京大学の中にある株式会社新光社に勤務。大学で教授が必要とする専門的な絵図を描く仕事に携わった後、株式会社宗像デザイン研究所に入社し、染め物とグリーティングカードの制作に3年ほど従事。その後、株式会社サンリオの第一号中途採用に受かりグリーティングカード企画部で長年勤務、デザイナー及びディレクターとして数多くのグリーティングカードに携わる。2007年6月、民営化される4か月前の日本郵政公社(当時)に中途採用として就職。切手・葉書室で切手デザイン、手紙振興、ぽすくまを専門とする。日本郵便のキャラクターぽすくまの生みの親。ぽすくまの誕生日は9月21日。

【スライド写真について】
1. 本人ポートレイト。
2. ディズニーのキャラクターも中丸さんが描いています。ウォルト・ディズニー・ジャパンを通じてアメリカのザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーに申請をして、認可されたものを使用するそう。中丸さんが描く優しい表情が、親しみを感じさせます。
3. 中丸さんは、特に時代ものの美人画が好きで得意だそう。「万国郵便大会議」で世界各国の郵政に配られた日本の切手をデザイン。「伝統文化の世界」(2017年)という切手も手がけています。
4. 通常は丸で表される色玉も切手のイラストに合わせた形に変更して表示。小さなところにも遊び心があります!
5. ムーミン切手の原画 キャラクターの動きまでを考えて、すべてのキャラクターに手紙を持たせるデザインを考案。フィンランド郵政の認可を得ているとのこと。

プロフィールを見る

商品づくりの根底には、「人を喜ばせたい」という思いがあります

−現在の職に就いた決め手は

もともと、短大卒業後は教員免許を活かそうと出身校の美術講師になる予定でしたが、口約束だったため、卒業する頃には校長先生が変わり就職できなくなってしまいました。しかし、その母校からの帰り道に電車内で偶然話した方とのご縁で、東京大学の中にある新光社という会社で勤めることになりました。大学教授からの依頼で、幼児の解剖図を描いたり、CTスキャンの断面図をトレースして描いたりする仕事に1年ほど携わっていました。
その後、多摩美術大学の先生が立ち上げた宗像デザイン研究所へ転職。そこは染め物とグリーティングカードの制作をしていて、主に和風の海外向けクリスマスカードを手がけていました。絵のとても上手い先輩がいて、この時代に絵を描くことに関していろいろと学ぶことができました。3年近く勤めた後、サンリオが初めての中途採用を募集していることを知り応募して見事再転職。ただ、希望していた出版部ではなく、新しく立ち上がったグリーティングカード企画部のデザイン室に配属されたのが縁のはじまりかもしれません。長年グリーティングカードに携わってきた経験から、人の勧めもあって、日本郵政公社(当時)へ再々転職したのが2007年の郵政民営化の少し前でした。

−どんな切手のデザインをされていますか

切手デザイナーとしてデビューしたのは2008年、女性が使うことをイメージして47都道府県の花を描いた「ふるさとの花」のシリーズです。前職では売り上げに関して非常に厳しく、何をどうすれば売れるのかというノウハウを鍛えられました。そんな経験もあってか、この花の切手は好評で、形を変えていろいろな花のシリーズとして現在まで続いています。切手に用いる絵は美しいだけでなく正確性が求められるので、小石川植物園などへ実際に行って、一枚一枚花の絵の考証をしていただいています。また、切手はパーソナルな商品であり「相手」があるものなので、どんな人にも使ってもらえるデザインを目指しています。若い人にも使って欲しいとの思いで可愛い形のシール切手を開発したり、宝塚歌劇団の記念切手をつくったり。これは関西方面で特に人気となり増刷されました。


はじめて手がけた「ふるさとの花」の切手。やさしさのある水彩画の花のデザインで、女性に人気のシリーズになりました。2010年「日本APEC」の切手は、花を切手の枠からはみ出させた大胆なデザインに。「私は花に助けられています」と中丸さん。


花の絵を描くときに長年使っている日本画の筆とパレット。ここから様々な花の切手が生まれています。雄しべ・雌しべの角度や花びらの数など、正確さが必要になるため、必ず小石川植物園まで足を運んで観察し、絵も一枚一枚考証を受けているそう。

−その中でも思い入れのある切手は

2012年の秋のグリーティング切手として、テディベアの切手を2011年に提案しました。そこで生まれたのがクマのぬいぐるみの郵便屋さん「ぽすくま」です。大変人気があり、東京宝塚劇場では着ぐるみのぽすくまとスターが一緒に取材も受けて、そちらもたいへん盛り上がりました。それから、ぽすくまを切手にする時にはただ撮影するだけでなく、写真をコンピューターに取り込んでから、目やまつ毛、口角等を描き加えています。キャラクターの顔は目や口元などのバランスがとても重要になります。現在は「ぽすくまと仲間たち」として8人のキャラクターに増え、登場する手紙振興イベントには今や三日間で45,000人もの集客があります。


「ぽすくま」が世に出る前のスケッチ。このぬいぐるみを撮影し、写真をコンピューターに取り込んだ後、目やまつ毛、口角などの配置や角度を詳細に描き加えています。


「宝塚歌劇公演100周年」の記念切手。関西方面では特に人気で、売り切れ続出!異例の増刷をしました。その後、着ぐるみとして初めて「ぽすくま」が東京宝塚劇場にスターと一緒に登場しました。

−デザインをするときに心がけていること

私は余白を残してデザインを終えています。手紙には送る人に対して添える思いがあるので、その気持ちを添えるための余白が必要だと考えています。「ノートスペース」とも言いますが、グリーティングカードで言えば、ちょっと一言を書くようなスペースです。また、押しつけがましくないデザインを心がけています。
そして切手を制作するにあたっては、「集めたくなる」ことはもちろん、「使いたくなる」、「送りたくなる」デザインを目指しています。「郵便」という文化が、皆さんの日常生活の中に広く楽しく浸透していくよう、お手伝いができたらと思います。

−夢をかなえるためにひと言

「あきらめないこと」だと思います。そして社会に出て働いてきた私のスタンスは、「仕事は人」だということ。人との出会いを大切にしてください。経験を積み重ねて、ご縁や仕事は「人」だということをあらためて感じています。
また、考えたことはすぐに手を動かして形にすること。形にしていないと話にならないので、大事なことだと思っています。決断力と仕事の速さも大事ですね。

−仕事で一番大事にしていること

私はアーティストではなく、あくまでも企業デザイナーだと思っていますし、皆さんに喜んでもらえるような商品づくりが好きです。お客様に喜んでもらえれば商品が売れる、そのことで会社も喜ぶ。昔からサービス精神が旺盛だったんです。小さい頃はネタものの漫画を描いて、それを読んだ友だちが笑って喜んでくれることに自分の幸せを感じていました。

−今旬なこと

2018年7月、ジ・アウトレット広島イオンモール内に日本で初めて「ぽすくま郵便局」が開局しました。店舗内はファミリー向けに温かみのある、森の中のような空間となっています。また、熊本復興を願い、くまモンとコラボした切手が9月に発売予定です。


「くまモン」と「ぽすくま」のコラボ切手。切手の雰囲気に合うよう、くまモンの絵も中丸さんが新しく描いています。こちらも熊本県庁の認可を得ている。

−編集後記

はじめてみた時に、嬉しい衝撃を受けた丸やサクラ型のシールの可愛い切手。これを生み出したのは中丸さんだと知りました。中丸さんは、「ぽすくま」を通して、手紙の魅力を全国で伝える活動もされています。花のシリーズの優しい雰囲気や、キャラクターの表情の温かみから、人を笑顔にする中丸さんのやさしい人柄を感じます。デザインを主張するのではなく、余白を残す。その余白には、買った人が相手のことを思って添える気持ちが託されています。大切な人や故郷の友人に、久しぶりに手紙を書きたくなりました。

取材:磯部藍(らん)(06通工生デ/文筆業・研修講師
ライタープロフィール
取材記事やマナーに関する書籍などを執筆
http://www.isoberan.com/

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