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HOME  > 卒業生インタビュー  > No.47 中島 健太 [画家]

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No.47 中島 健太 [画家]

中島 健太(なかじま・けんた)
画家
(2008年[2007年度]武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業)

1984年、東京都生まれ。2004年、武蔵野美術大学造形学部油絵学科に入学。3年生のときに油絵画家としてプロデビュー。2008年に卒業し、同年10月に池袋東武百貨店で初個展を開催。2009年、日展に初出展し、特選を受賞。初出展としては最年少(24歳)の特選受賞だった。2018年4月、タレントのベッキーをモデルにした肖像画を蔦屋書店、NEWoMan新宿などで展示し、反響を呼んだ。現在までの作品点数は500点を超え、そのすべてが完売している。
2018年放送のフジテレビ系連続ドラマ『コンフィデンスマンJP』美術商編、2019年放送のTBS系連続ドラマ『4分間のマリーゴールド』で絵画監修を行う。
テレビ東京『ひねくれ3』、TBS『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』『NEWS23』、テレビ朝日『白の美術館』などに出演。現在、番組ポスターを手掛けたTBS朝の情報番組『グッとラック!』の木曜日コメンテーターとしても活躍中。
Webサイト:https://www.nakajimakenta.com/

 

【スライド写真について】
1 本人ポートレート
2 作品「呼吸」──モデル:ベッキー
3 作品「Frozen Time -不変-」──モデル:新川優愛
4 作品「あの話の続き」
5 作品「19/11/24の地平線」

プロフィールを見る

写実絵画は“想いを伝える力”においては、写真よりも強い。

−高3までアメフトをされていたのに、進路を美大にした理由は、美術教諭に影響を受けたからだとか。

確かにその美術教諭のまとっている空気感──自由さやマイペースさに憧れた部分はあったのですが、唯一の理由でもないんです。
僕は高校時代、朝寝坊ばかりしていて、170回くらい遅刻したんです(笑)。それにアメフトをやったことで、チームスポーツに向いてないと気がついた。ワンチームにならないと力を発揮しないのがチームスポーツだけど、僕にはそこまでのモチベーションがないと。それより自分のペースで何かを突き詰めていくことの方が向いているってわかったんですね。
そうやって自分の適正を見極め、やりたくないこと、できないことを除いていったら、残った選択肢が美術でした。

−大学3年生で早々に画家としてデビューされています。これは中島さんが大学1年生のときに逝去されたお父様のことも大きかったとか。

ええ。父は54歳でした。経済的に行き詰まり、いつまで大学を続けられるかわからないし、卒業できなければ教育免許を取得できるかもわからない。であれば、技術を磨くことに集中しようと思ったんです。
同時に、リアルな人生の終わりと、天職を持った人の人生がいかに充実しているのかということも感じました。父は経済的に恵まれた職を捨て、40代半ばで出家しました。家庭としては非常に困窮したのですが、天職を見つけたあとの父は、それまでよりもはるかにリラックスして見えた。業なんていうものはそう簡単に捨てられやしないし、出家したからといって聖なる人格を手にするものではないけれど(笑)、それでも父が人生を楽しみ、幸せでいることが僕にも伝わってきました。
それで僕も画家として生きようと決めました。在学中にどこまでプロに近づけるか、必死でしたよ。「ピンチはチャンス」という言葉があるけれど、追い込まれることによって強制的に腹をくくらざるを得ないという状況は、僕の画業においては非常にプラスでしたね。

−ベッキーさん、新川優愛さんなどの写実絵画で、一躍時の人になりました。これまで描いた500作品がすべて売れていることから「完売画家」とも言われています。

写実絵画は常に「写真と何が違うの?」という批判と向き合わなければいけません。合理性だけで言えば、写真の方がやはり優れている。正確にものを捉えるとか、複製できる、データ化して管理できるとか。では、写実絵画が写真に勝る部分は何か?──僕は、想いを伝える力において、写実絵画は写真よりも強いのではないかと思うんです。
例えば、手書きの手紙とパソコンで書いた手紙、どちらの方がより想いが伝わるかという問いに、「パソコン」と答える人は少ないのではないか。それは向き合った時間を受け取り手が想像できるからだと思います。写実絵画も同じで、作家が一筆ずつ筆を置いていった時間の集積です。だからこそ、見た人が写真とは違う魅力を感じ取ってくれるのではないでしょうか。


仕事部屋はモチーフや画材、キャンバスで埋め尽くされていた。絵は基本的には毎日、平均10時間以上描くという。

−インターンをとって育てている理由は?

ちょっと話がズレますが、以前、瀬戸内寂聴先生を描かせていただいたんです。それで97歳まで作家を続けられた理由を尋ねたら、「才能ね」と言われて。それを言っちゃ元も子もないという話で(笑)、それにやはり絵画業界も才能が必要な世界ではある。ただ、もう一方で「環境」というものも非常に重要なんですよね。どれだけいい種があったとしても、砂漠では育たないというか。


瀬戸内寂聴さんを描いた作品。タイトルは寂聴さん自ら「慈悲」と命名。現在は京都の「寂庵」に秘蔵されている。

そんな環境を整えるという試みで、インターン制度を約10年続けました。みんな非常に努力するし、才能のある・なしは抜きにしても、続けていくことで力をつけていく。ただ、生き残るのは本当に難しいなと。才能のある人間しか残らない業界というのは非常に過酷ですよね。お笑い芸人だと一流から三流までいて、その層の厚さによって需要も大きくなる。だから、少なくとも二流の画家というか、超一流じゃなくても生きられるような環境がないと、と思っています。超一流というのはそんなに簡単に生まれないし、仮に彼らしか作品を生み出さないとなれば、ユーザーとしても買えるものが少なくなってしまう。もう少し分厚いコレクター層と分厚い作家層がないと、この業界は活性化していかないんです。それで、テレビ出演なども始めました。


2019年秋の個展『「完売画家」中島健太 絵画のチカラ展』では、会場内でライブペインティングも行った

−今後の展望は?

「画家は寡黙でいい」という時代も終わりつつあります。それこそ西洋の現代アートのフィールドにおいては、どれだけロジックが重要かという時代に入っている。モノだけで勝負すると価格競争になってしまうから、そのモノの価値を何らかの形で大きくし、付加価値をつける必要がある。そのとき、言葉というのが非常に重要になるのではないでしょうか。
写実絵画は美大の潮流のメインではありません。一方で、いまいちばんマーケットを持ち、人気があるのが写実でもある。そこのズレ自体が問題なんですね。僕自身は、写実絵画だけが美術・芸術業界のすべてだとは思っていないし、例えば抽象画のマーケットがじわりと広がっていくということも重要だと思っているので、そのためにも自分という画家の認知を獲得し、多くの人に美術というものに興味を持ってもらうということを目指しています。


中島健太作品集。エッセイも掲載されている

−最後にムサビで学ぶ学生にメッセージを。

美大の外に出ましょう。僕は1年生の秋から約1年間、六本木のキャバクラでバーテンのアルバイトをしていたのですが、そこでいろんな人間模様を見ることができました。「六本木夜間部」と言っていたんですが(笑)、夜間部に通って人間観察の目は養えた経験はすごくよかった。社会が多様であり、その延長線上にものづくりの多様性があるという世界観を、学生時代に体感できるといいのではないかと思います。いろんな人生に触れるのが、ものをつくるうえでの醍醐味ですから。

取材:堀 香織(92学油/フリーランスライター兼編集者)
ライタープロフィール
鎌倉市在住のライター/編集者。雑誌『SWITCH』の編集者を経て、フリーに。『Forbes JAPAN』ほか、各媒体でインタビューを中心に執筆中。単行本のブックライティングに、是枝裕和著『映画を撮りながら考えたこと』、三澤茂計・三澤彩奈著『日本のワインで奇跡を起こす 山梨のブドウ「甲州」が世界の頂点をつかむまで』など。是枝裕和著『希林さんといっしょに。』、桜雪(仮面女子)対談集『ニッポン幸福戦略』などの編集・構成も担当。
https://note.mu/holykaoru/n/ne43d62555801

撮影:野崎 航正(09学映/写真コース)

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